横浜市立市民病院 院長 石原 淳 先生 2016年 4月

先ず横浜市立市民病院の再整備計画の状況について御報告させていただきます。

昨年度一年かけて基本設計を終え、本年度は実施設計に移行しており、2020年の開院に向けて順調に計画は進んでおります。今後とも変わらずご支援をお願い致します。
 さて、今回、横浜三四会のホームページに自由にコラムを書いてよいとのことで、多少考えた結果、2年前に日本私立病院協会会報の巻頭に書かせていただいた文章を再掲させて頂くこととした。2年経って、益々その思いを強くしているからである。

全国知事会議が2014年7月15日に開かれ、少子化非常事態宣言を採択した。
宣言は「少子化対策を国家的課題と位置付け、国と地方が総力を挙げて少子化対策の抜本的強化に取り組む」としている。
この会議に参加した日本創生会議座長の増田寛也元総務相は若年女性の激減に伴い、約半数の自治体が消滅する可能性があると推計した。
政府も9月には地方創生担当相を新設し、「まち・ひと・しごと創生本部」が発足し、2060年時点での日本の人口について1億人の大台を維持するとの目標を掲げ、来年1月には長期ビジョンと総合戦略をまとめる予定になっている。
 これまで、医療においても「少子高齢化」は幾度となく使われてきたが、小児科医としての私から見れば、この場合の少子は高齢化の枕詞として使われてきた感が否めない。団塊の世代が75歳以上となる2025年への対策は確かに待ったなしではあるが、国の政策からすれば、国力に繋がる少子化についてより深い議論が必要であろう。少子化については、政策的誘導はすべきでない、あるいは、誘導の通りにはいかない、または、そもそも少子化は必ずしも悪いことばかりではない等の意見もあるが、いずれにしても大いに議論されるべき時期に来ているのは間違いない。フランスの歴史人口学者 エマニュエル トッドは日本の人口問題についてのインタビューにおいて、「日本人は、出生率が問題であるという事実をかなり意識しているが、それが唯一の問題であることに気づいていない」と述べている。その中で、フランスにおいて少子化の問題がないのは、フランスは教育費がほとんど無料で中所得者層がその恩恵を受け、育児環境が支援されていることにも触れている。
 ところで、過日、大学の同窓に米沢出身の先生がいて、同窓会を米沢市で行なった。米沢市は初めての地であったが、ここで米沢藩の立て直しに尽力した上杉鷹山について知る機会を得た。上杉鷹山公については御存じの方も多いと思うが、私は全くの不勉強であった。彼は一汁一菜等を率先垂範する一方、教育は国を治める根本を信念として、財政難のため閉鎖されていた藩校を再興するなどしたという。何か今の時代に通ずるものがあるようにも思える。